2019年7月21日日曜日

19年6月度承認一覧

審査報告書が出そろうのを待っていたので遅くなってしまいましたが6月度の承認関係一覧です。 先月少なかった分、今月は多めになっています。

新規

ポートラーザ点滴静注液800mg

ネシツムマブ
切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺癌
GC(ゲムシタビンを1日目と8日目、シスプラチンを1日目。3週間毎に実施)に上乗せで使用。
抗EGFRモノクロール抗体になります。GC+ネツシマブでは皮膚障害と低マグネシウム血症が多く起こっています。またネシツムマブ上乗せで心停止の発生が増えているとの記載があります。化学療法歴のない場合の初回療法のひとつということになりそうです。  

イナビル吸入懸濁用160mgセット

ラニナミビル
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療
生食で懸濁し付属のネブライザーで単回吸入投与。
イナビル吸入粉末剤の吸入が難しい5才未満の小児や肺機能が低下(気管支喘息・COPD等)で吸入の難しい患者、乳製品に対して過敏症のある患者(イナビル吸入粉末剤には乳頭が添加剤として使用されているため)に使用。
生食2mlに溶解懸濁し、付属のネブライザーをコンプレッサーにつないで吸入してもらうことで投薬になります。

ロナセンテープ20mg・30mg・40mg

ブロナンセリン
統合失調症
1日1回40mgを胸部・腹部・背部に張り付け24時間ごとに張り替えて使用。最大1日80mgを超えない。
貼り付けを始めて2週間程度で血漿中ブロナンセリン濃度は定常化するとされています。
また、経口8mg/日が貼付剤40mg/日相当とされています。

ゾルトファイ配合注フレックスタッチ

インスリン デグルデク+リラグルチド
インスリン療法が適応となる2型糖尿病
通常、成人では、初期は 1日1回10ドーズを皮下注射する。投与量は患者の状態に応じて適宜増減するが、1日50ドーズを超えないこと。 注射時刻は原則として毎日一定とする。
トレシーバとビクトーザの合剤で用量単位はドーズとされ、1ドーズはトレシーバ1単位とビクトーサ0.036mgとなっています。
トレシーバは最大使用量1.8mg/日なので50ドーズまでならOKという形なのではないかと思われます。
基礎分泌分のある程度をライゾテグで押さえといて、食事時の変動分をビクトーザで対応という形になるので、インスリン単体と比べて低血糖が起こりにくいことが期待できます。
適応上はインスリン療法が適応となる2型糖尿病となっていますが、GLP-1作動薬を打っているのと同じことですので、インスリン分泌能が残っている患者様にしか使えないので注意。また、インスリン以外の血糖降下剤が使えない場合には当然使用不可になります。

ミニリンメルトOD錠25μg・50μg

デスモプレシン
男性における夜間多尿による夜間頻尿
成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50µgを経口投与する。
今まで夜尿症や中枢性尿崩症に使われていたデスモプレシンを多尿による夜間頻尿向けに新規容量で製剤化したものになります。
元々は男女とも使用できるという形で承認申請されていたみたいですが、女性に対する有効性が証明できなかったため、男性のみ使用可能となっています。
前立腺肥大・過活動膀胱、その他疾患由来の夜間多尿の可能性を否定したうえで夜間飲水の制限等行って、それでも残っている夜間多尿に対して使用することになります。
ちなみに、今までのミニリンメルト(60μg・120μg・240μg)は協和キリン扱い。今回のミニリンメルトOD錠25μg・50μgはキッセイ扱いになります。

アジマイシン点眼液1%

アジスロマイシン
結膜炎
    成人及び7才以上の小児において1回1滴1日2回2日間点眼。その後1日1回5日間点眼。
眼瞼炎・麦粒腫・涙嚢炎
    成人において1回1滴1日2回2日間点眼。その後1日1回12日間点眼。
アジスロマイシンの点眼薬が出ました。耐性菌対応として感受性の確認が必要であることと投与期間の制約があります。
副作用は角膜障害リスクということになります。非キノロン系点眼薬の種類が限られているので、耐性菌抑制のためにも開発が行われたとされています。

ビレーズトリ56吸入・112吸入

ブデソニド+グリコピロニウム+ホルモテロール
COPD(ICS+LABA+LAMAが必要な場合)
1日2回 1回2吸入
新規のpMIDでそれぞれの有効成分を微粒子に結合させてある形になっていて、その粒子を吸入することで肺の末端まで薬を届けてやろうという考え方の製剤になります。
ACOと限定していなくてもLABA+LAMAよりもICS+LABA+LAMAの方がよく効いているということになります
テルリジーがライバルということになるんでしょうね

ビベスピ28吸入・120吸入

グリコピロニウム+ホルモテロール
COPD(LABA+LAMAが必要な場合)
1日2回 1回2吸入
新規のpMIDでそれぞれの有効成分を微粒子に結合させてある形になっていて、その粒子を吸入することで肺の末端まで薬を届けてやろうという考え方の製剤になります。
ビレーズトリを使う前に入れて様子を見る感じになるんでしょうか
アノーロがライバルということになるんでしょうね

オンパットロ点滴静注2mg/mL

パチシラン
トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー
トランスサイレチンの関連遺伝子に変異がある場合、トランスサイレチンが不安定な構造をとり壊れてアミロイドを形成します。その形成されたアミロイドが神経や臓器に蓄積することで症状が現れるとされています。今まで、ビンダゲルカプセルがトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーとトランスサイレチン型心アミロイドーシスの適応で使われていたのですが、それでも病勢を抑えることができない場合もあったようです。そこで元々のトランスサイレチンの合成を抑える薬として開発されたものになります。

ユルトミリス点滴静注300mg

ラブリズマブ
発作性夜間ヘモグロビン尿症
遺伝子の後天的な異常で補体による溶血が起こることで症状が現れるとされています。今まではC5補体のモノクローナル抗体であるソリリスを投与して症状を抑える治療が行われていましたが一部の患者さんでは十分な効果が得られていませんでした。そこで、より持続性があるように開発されたものとなります。  

ヴァンフリタ錠17.7 mg・26.5mg

キザルチニブ
再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病
通常、成人にはキザルチニブとして1日1回26.5mgを2週間経口投与し、それ以降は1日1回53mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
再発又は難治性の急性骨髄性白血病急性について標準治療はなく、再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病についてゾスバタが承認になっています。そこにもう一個治療法が追加になった形になります。

デファイテリオ静注200mg

デフィブロチド
肝類洞閉塞症候群(肝中心静脈閉塞症)
肝類洞閉塞症候群は造血細胞移植前の骨髄破壊的前処置によって肝類洞内皮細胞が傷害され肝類洞の閉塞が起こる状況とされています。そこに投与することで肝類洞内皮細胞の保護作用があるとされています。

ロズリートレクカプセル100 mg・200mg

エヌトレクチニブ
NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌
通常、成人にはエヌトレクチニブとして1日1回600mgを経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
通常、小児にはエヌトレクチニブとして1日1回300mg/m2(体表面積)を経口投与する。ただし、00mgを超えないこと。なお、患者の状態により適宜減量する。
がん遺伝子パネル検査を行って、該当のがんであれば部位にかかわらす使用する形になります。また、標準治療がある癌種であったとしても、該当のがんであるならば標準治療の前に使用するべきとされています。
副作用は重篤なものとして心障害(心不全・心室性期外収縮・心筋炎など)、QT延長、認識障害・運動失調、間質性肺炎。味覚異常、めまい、疲労、便秘、下痢、浮腫、貧血などになります。

シムツーザ配合錠

ダルナビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル
HIV-1感染症
通常、成人及び12歳以上かつ体重40㎏以上の小児には、1回1錠(ダルナビルとして800mg、コビシスタットとして150mg、エムトリシタビンとして200mg及びテノホビルアラフェナミドとして10mgを含有)を1日1回食事中又は食直後に経口投与する。
抗HIVガイドラインではDEV/COBIとFTC/TAFの併用レジュメンが初回治療の推奨レジュメンのひとつとなっているので、それを一剤でできるようにした薬になります。

ベバシズマブBS点滴静注100mg「ファイザー」・400mg

ベバシズマブ(遺伝子組換え)[ベバシズマブ後続 1 ]
治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌
アバスチンのバイオシミラーになります。適応が先発に比べ狭いことに注意。

一変

ロミプレート皮下注250µg調製用

ロミプロスチム
既存治療で効果不十分な再生不良性貧血が適応追加。
再生不良性貧血の場合、免疫抑制療法を行いますが効果不十分の場合の療法として適応が追加になりました。

インチュニブ錠1mg・3mg

グアンファシン
18才以上の大人に対する適応が追加。
通常、18歳以上の患者には,グアンファシンとして1日2mgより投与を開始し,1週間以上の間隔をあけて1mgずつ,1日4~6mgの維持用量まで増量する。なお,症状により適宜増減するが,1日用量は6mgを超えない。

ジェムザール注射用200mg・1g

ゲムシタビン
非小細胞肺癌におけるシスプラチンとの併用レジュメンが適応追加

サイラムザ点滴静注液100 mg・500mg

ラムシルマブ
がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400ng/mL以上の切除不能な肝細胞癌に対する適応が追加
切除不能な肝細胞癌の場合、ネクサバールを使って次にスチバーガという形での治療はできたのですが、そこにもう一剤追加で使える薬が増えた形になっています。

レパーサ皮下注

エボロクマブ
今までは家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症で心血管イベントの発症リスクが高くHMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分の場合に使用可能だったのですが、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分の場合及びHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない場合(例えば横紋筋融解症の既往とか筋肉痛が起こるなど)も使用可能となりました。

リムパーザ錠100 mg・150mg

オラパリブ
BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌における初回化学療法後の維持療法の適応が追加
今まで、白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法の適応はあったのですが今後は初回化学療法後の維持療法にも(遺伝子変異があれば)使用可能になります。

この中で調剤薬局にかかわりがありそうなのはゾルトファイ配合注フレックスタッチやミニリンメルトOD錠25μg・50μg、アジマイシン点眼液1%、ビレーズトリ56吸入・112吸入、ビベスピ28吸入・120吸入あたりかなと思います。 NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌なら癌種関係なしのロズリートレクカプセル100 mg・200mgのような薬が増えてくると(普通の)調剤薬局では知識的に対応しきれないような気がするのは私だけでしょうか?

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